久しぶりに、ひとつのことだけ考えていた。

気づいたら、またスマホを見ていた。

特に見たいものがあったわけじゃない。
ただ、手が動いていた。

通知が来る。
返す。
また来る。
動画を開く。
1.5倍速で観る。
次の動画が自動で始まる。

気づいたら、1時間が経っていた。
何も残っていなかった。

注意が、バラバラになっている

現代人が1日に触れる情報量は、江戸時代の1年分とも言われています。

スマホの通知が、24時間脳を刺激し続けている。
仕事のチャット、SNS、ニュース——常に何かが割り込んでくる。

「何もしない時間」が、どこにもない。
休もうとしても、別の何かに注意が引っ張られる。

疲れているのに、眠れない。
脳は動き続けているのに、何も積み上がっていない。

手軽さという、贅沢

ジムに行こうとすると、着替えて、移動して、また着替えて——それだけで気持ちが途切れてしまう日もある。

ビリヤードは、そうじゃない。

仕事帰りのスーツのまま入れる。
道具は全部、お店にある。
汗だくにならないから、着替えもシャワーも要らない。
時間制だから、30分でも1時間でも、その日の気分で決めればいい。

始めるための手間が、ほとんどない。
それが、疲れた平日にはちょうどいい。

キューを握った瞬間、通知のことを忘れた

ミリ単位の角度を読む。
手球の行方を思い描く。
次の配置を予測する——。

その一球の前に立つと、それ以外のことが消えていく。

仕事のメール。
返していないLINE。
さっきまで気になっていたこと——。

余計なタスクが、ひとつずつ視界から外れていく。

気づいたら、テーブルの脇にスマホを置いていた。
振動しても、気にならなかった。

久しぶりに、ひとつのことだけを考えていた。

バラバラだった注意が、一点に戻る

脳を休めているわけじゃない。
むしろ、集中している。

でも余計なタスクが消えているから、頭の中が静かになる。

ひとつのことに集中している時間は、思っている以上に少ない。
だからこそ、その静けさが心地よかった。

帰り道のこと

スマホを開いたら、通知がたくさん来ていた。

でも不思議と、急いで返す気になれなかった。

頭の中が、久しぶりに静かだった。
今夜は、ちゃんと眠れそうだった。

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