知的な週末の過ごし方。——14-1というゲームは、人生に似ている。

今週末、東京でビリヤードの公式オープン戦が開催されます。

第54回 全日本14-1オープン選手権。

日本で唯一の14-1公式オープン戦です。
予選は5月16日(土)、決勝は5月17日(日)——そして観戦は無料です。

「14-1って何?」という方も、ぜひ最後まで読んでください。これはビリヤードの話であり、仕事や人生の話でもあります。

14-1というゲームを、まず知ってほしい

ナインボールはご存知の方も多いかもしれません。
14-1は、それとは全く異なる競技です。

テーブルに15個の球が並びます。
どの球から狙ってもOK(エニーボール)。
ただし、全てのショットで「どの球をどのポケットに入れるか」を宣言しなければなりません(コールショット)。

宣言した通りに決めれば1点。
規定点に先に達した方が勝ち。
今回の大会のフォーマットは予選は75点、ベスト16からは90点に先に達した方が勝ちになります。

さらに面白いのはここからです。
14個の球を落としたら、残り1個を残したままラックを組み直します。
そしてその1個をポケットしながら次のラックを壊し、また取り切っていく——これを規定得点まで繰り返します。

コールショットのため、ブレイクは派手に割らず、セーフティブレイクが基本です。
つまり最初からクラスタ(球の塊)をどう処理するかという頭脳戦が始まります。

ナインボールのような派手さはありません。
その代わり、繊細な手球のコントロールと知的な組み立てが際立つ、静かで深い競技です。

キーボールとブレイクボール——14-1の最重要ポイント

14-1を観る上で、ぜひ知っておいてほしいことがあります。

ブレイクボール——取り切りの最後に落とす球。この球をポケットしながら、新しくラックを組んだ14個の球を崩します。理想的な角度でラックを崩せるかどうかが、次のラックへの流れを決めます。

キーボール——ブレイクボールの一つ前に落とす球。この球を落とした後、手球がブレイクボールを理想的な角度で狙える位置に止まることが求められます。

重要なのは、キーボールもブレイクボールも、最初から決まっているわけではないという点です。
取り切りの中で配置を見ながら、「この球をキーボールにしよう」「あの球をブレイクボールに使おう」と動的に判断しながら構築していきます。

さらに、理想的なブレイクボールになる球がない場合には、取り切りの途中で手球を意図的に別の球に当てて、その球をブレイクボールに適した位置に移動させていくこともあります。
これが「ブレイクボールを作る」ということです。

全てが最良にセッティングされているわけではありません。
それを自分の知性と技術で解決していく——それが14-1という競技の奥深さです。
この組み立てと判断の連続を意識しながら観ると、14-1の面白さが全く違って見えてきます。

14-1は、人生の縮図です

ナインボールや10ボールは、狙う順番が決まっています。
次に何をすべきかは、ルールが教えてくれます。

14-1は違います。

エニーボールだから、何から狙うかも、どこに手球を出すかも、全て自分で決めます。
正解は誰も教えてくれませんし、そもそも正解なんてものは存在しません。

その選択の積み重ねが取り切りを生み、ミスをすれば全て自分の責任です。言い訳できません。

仕事も、勉強も、対人関係も、同じではないでしょうか。
ゴールは自分で決める。
そこに辿り着くための過程も、自分で整えていく。

上手くいく時は気持ちよく走り続けられます。
取り切りが続く選手の動きには、リズムと自信が宿っています。

でも一度ミスをすると、ターンは相手に渡ります。
14-1のトップレベルの試合では、相手が走り続ければ次の出番がいつ来るかわかりません。
ただ待つしかない。

その時間が、この競技で最も過酷な時間かもしれません。

焦るのか。
気持ちを切り替えるのか。
相手のミスを静かに待つのか。

撞き番を待つ選手の表情を、ぜひ注目して見てください。
プレーしていない瞬間にこそ、その選手のメンタルと本質が滲み出ます。

走り続けることと、待ち続けること。
どちらも14-1には、そして人生にも必要です。

だから、観に行く価値がある

野球やサッカーを観に行くのは、興奮や熱狂を味わうためかもしれません。

14-1を観に行くのは、少し違います。

選手が描き出す知的戦略と、それを実現する繊細な技術——その一連の流れを目の当たりにする体験は、ある種の芸術鑑賞に近いものがあります。

1人で観ながら、頭の中で次の展開を予想する。
友人や恋人と並んで、「あそこはどの球を選ぶだろう」と語り合う。

ウイスキーグラスを傾けながら詩的な言葉で語らい合う——そんな小説の中の主人公のような時間が、ここにはあります。

それって、かなりおしゃれじゃないですか。

そういった知的で豊かな時間を持つことは、人生を豊かにします。
仕事の発想が広がることもある。
人との会話に深みが出ることもある。

それはある種の教養です。

美術館や音楽会に足を運ぶように、14-1を観に行く。
そういう選択肢が、あなたの週末にあっても良いのではないでしょうか。

今週末、池袋へ

決勝会場は池袋・ロサ会館のビリヤード・ロサ。
国内最大級の全33台を誇るビリヤード場で、同じ建物内にはボウリング、映画館、ゲームセンターもあります。

観戦の前後にボウリングや映画を楽しんでも良いですし、試合を観た後に自分もキューを握ってみたくなったら、その場ですぐに体験できる環境が整っています。

そして今大会の注目ポイントは土方隼斗プロの3連覇がかかっているという点です。
現在2連覇中の土方プロに対し、5度の全日本14-1選手権優勝を誇る羅立文プロも参戦します。
3連覇を目指す土方プロと、それを阻止しようとする羅プロ——この対決が実現するかどうかも、大きな見どころの一つです。

そしてもう一つ、この大会ならではの楽しみがあります。

日本で唯一の14-1公式オープン戦であるこの大会には、日々14-1という競技に向き合い続けているトップアマ選手たちも出場します。
プロの公式戦はほとんどが9ボールや10ボールであるため、プロは普段そちらを中心に練習しています。
一方でアマ選手の中には14-1を専門的に磨き続けている選手も多く、プロを倒していく場面も十分あり得ます。

プロvsアマという構図、土方プロvs羅プロという頂上対決、そして14-1という競技の知的な美しさ——今週末は様々な角度から14-1を楽しめます。
ビリヤードを知らない方でも、その緊張感は肌で感じられるはずです。

観戦料は無料です。

知的な週末を、池袋で。
あなたの中の何かが変わるかもしれません。

第54回 全日本14-1オープン選手権

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