ばいきんまんと、ホラーマンと、ビリヤードの話。

雨の音が響いていました。

コーヒーを淹れて、ふとテレビをつけたら、アンパンマンが流れていた。

なんとなく見ていたら、ばいきんまんが出てきた。

悪いやつだ——と思いかけて、ふと手が止まりました。

ばいきんまんの、背中

ばいきんまんは、毎回全力です。

どれだけ負けても、また挑んでくる。
ドキンちゃんに頼まれれば、どんな無茶でも引き受ける。
文句も言わずに、また飛び出していく。

誰かに「ありがとう」と言われたことがあるのだろうか。

その背中を見ていると、悪よりも、不器用な誠実さを感じてしまうのです。

ホラーマンのこと

ばいきんまんの城に、ホラーマンという居候がいます。

名前だけ聞けば怖そうです。
見た目も、お世辞にも可愛いとは言えない。
でも彼は優しい。
頼まれれば嫌な顔一つせずに動いて、いつも傍にいる。

ばいきんまんも、彼を追い出したりしない。

怖そうな外見の二人が、静かに同じ城で暮らしている——その光景を想像すると、なんだか温かい気持ちになります。

知っているのに、決めつけてしまう

人間関係でも、同じことがあると思います。

長く付き合っている友人のことを、わかっているつもりでいる。
恋人の機嫌が悪い時、理由も聞かずに「また同じパターンだ」と決めつける。
家族に対して、もう何も変わらないと思い込んでいる。

でも実際に話してみると、全く違うことを考えていた——なんてことが、案外たくさんあります。

わかっているはずなのに、先入観から入って、すれ違う。

それは相手への決めつけではなく、自分の中にある「像」と話していただけだったりします。

外れる球があるから

雨が続いていたある夜、なんとなく通り過ぎていたビリヤード場の扉を、ふと開けてみたことがありました。

思っていたより、静かな場所だった。

みんな、それぞれのテーブルに向かって、自分の球と向き合っていた。
誰も、大声を出していない。
誰も、こちらを気にしていない。

思っていたのと、全然違った。

テーブルの前に立ってみると、思い通りにいかないことばかりです。
狙った球が外れる。手球が予想と全く違う場所に転がる。

でも、そういう夜があるから、球が入った瞬間の喜びがある。

うまくいかない球があるから、入った球が嬉しい。

ばいきんまんが毎回負けながらも立ち上がる姿と、どこか重なる気がします。

見えているものと、見えていないもの

同じ空でも、見る人によって全く違う色に映ることがあります。

ばいきんまんは、今日も負けるのでしょう。

でも、その背中に何があるのかは——案外、誰も知らないのかもしれません。

コーヒーが冷めていました。

雨は、まだ降っていました。


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