気になっただけ、だった。——本屋と、ビリヤードの話。

本屋でふと手に取った一冊が、今でも手放せない本になっていることがあります。

探していたわけじゃない。
たまたま目に入った。
なんとなく開いたら、続きが読みたくなった。

あの日の自分は、たぶん何も期待していなかった。

雷は、落ちない

運命の出会いというと、雷に打たれたような瞬間を想像します。

でも本当に人生を変えるものは、案外そんな顔をしていない。

装丁が気になった。
タイトルが引っかかった。
最初の数行を読んだら、ページをめくる手が止まらなくなった——。

気づいたらレジに並んでいた、というだけの話です。

恋も、仕事も、趣味も、振り返るとたいていそうじゃないでしょうか。
大きな決断をした気はしていない。
ただほんの少し気になって、もう一歩近づいてみた。
それが始まりだった。

ビリヤードも、そういうものです

「ビリヤードってどんなきっかけで始めるの?」と聞くと、答えはだいたい似ています。

友人に誘われて、なんとなく行ってみた。
通りがかりに緑のテーブルが見えて、気になった。
雨の日に時間を持て余して、ふらっと入った。

特別な理由はない。
でもキューを握ってみたら、なんか面白かった。

それだけで十分です。

気づいていないだけかもしれない

本屋で、気になる本を棚に戻す人がいる。

ビリヤード場の前で、一度立ち止まって、そのまま通り過ぎる人がいる。

その本を読まなくても人生は続く。
その店に入らなくても人生は続く。

でも、もし扉を開けていたら。

そんなことを思う日が、いつか来るのかもしれません。

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