A Year in Yokohama
港が開いた日を祝う初夏を軸に、この街の一年はめぐってきました。
庭の梅がほころび、川沿いに桜が散り、池に蓮がひらき、丘の洋館に灯がともる。
季節ごとに、神輿を担ぐ人、路上で芸を見せる人、獅子とともに店々を回る人がいます。
横浜の一年を、月ごとにご案内します。
港の暦The Port’s Calendar
1860(万延元)年6月2日。開港からちょうど一年のその日、横浜の人たちは山車を出し、手踊りで、街じゅうを挙げて祝ったといいます。横浜市は、これを開港記念日の始まりとしています(『広報よこはま』2026年5月号)。百六十年あまりが過ぎたいまも、6月2日は、この街にとって特別な日です。
横浜の行事には、海の向こうから来て、ここに根づいたものが少なくありません。旧暦で新しい年を迎える中華街の春節。山手の洋館に飾られる、さまざまな国のクリスマス。そのすぐそばで、新田が開かれたころからこの地にあるお宮の祭りが、毎年、同じ町内を巡ります。
どの祭りにも、続けてきた人がいます。戦争で途絶えた梅の会を、もう一度開いた人たち。客足の遠のいた町に、大道芸を呼んだ商店主たち。帆を一枚ずつ、手で広げるボランティアの人たち。季節の行事は、その人たちの手で、毎年あらためて形になっています。
1月・2月 ふたつの新年January – February
三溪園で過ごすお正月例年1月1日〜3日
正月の三が日、三溪園では、原三溪が1902年に自宅として建てた鶴翔閣(横浜市指定有形文化財)が公開されます。ふだんは中に入れない建物です。催しの内容は、年によって変わります。
横浜中華街の春節旧暦の正月に合わせて、例年2月前後
中国の暦では、旧暦の正月を「春節」と呼び、盛大に祝います。横浜中華街では1986年から春節の催しが開かれ、2026年で40回を数えました。
白や黄色に彩られた獅子が店々を回り、商売繁盛と五穀豊穣を祈る「採青(つぁいちん)」。皇帝の衣装をまとった一行と獅子が街を練り歩く「祝舞遊行」。そして春節の結びには、横濱媽祖廟で元宵節の燈籠祭が開かれます(2026年は3月3日)。街が、海の向こうと同じ暦で、新しい年を迎える季節です。
三溪園 観梅会例年2月上旬〜3月上旬
1908年、原三溪は、蒲田や杉田などの梅林から古木を集めて梅林を仕上げ、その完成を祝って観梅会を開きました。戦争などで途絶えたのち、1975年にふたたび始まり、2026年で52回目。三溪が移したころから残る臥竜梅と、1977年に上海市から贈られた緑萼梅が、早い春を告げます。
観梅会の土・日曜と祝日には、外苑の奥の初音茶屋で、麦茶がふるまわれます。開園のころから、誰もが自由にお茶を飲めた茶屋で、1915年には芥川龍之介も立ち寄りました。
3月・4月 川の桜と、路上の芸March – April
大岡川の桜例年3月下旬〜4月上旬
日ノ出町から黄金町へ、大岡川の両岸に桜が続きます。中区役所は毎年、大岡川の桜の開花の様子を伝えています(2026年は3月17日から4月6日まで)。
この川べりの桜は、ひと続きの時間の上にあります。明治のはじめ、川岸に桜が植えられました。戦後の1948年の夏には、沈んだ船やごみを川からさらい、岸に桜や柳を戦前のように植え直した人たちがいました(『中区史』)。
上流の南区、大岡川プロムナードも、横浜で指折りの桜の名所です。南区の「みなみ桜まつり」(2026年で3回目)では、区民や地域の人たちが協賛したぼんぼりが川沿いに連なり、夜の桜を照らします。
三溪園 桜ライトアップ例年3月下旬〜4月上旬
園内には9種類、約250本の桜。夜は開園の時間をのばし、桜とともに、旧燈明寺三重塔などの古い建物にも光が当てられます。
野毛大道芸例年4月
1986年の春、客足の遠のいた野毛で、地元の商店主たちの呼びかけで始まりました。企画から運営まで、街の人を中心にボランティアが担い、2026年4月で51回目を数えました。
見物料は、見た人がその満足に応じて投げる「投げ銭」です。戦後の野毛が、定価のない「闇市」だったからだ、と実行委員の一人は語っています(ヨコハマ経済新聞、2004年)。
5月・6月 開港の月May – June
5月3日のパレードから、6月2日の開港記念日まで。横浜市は、このひと月を「横浜開港月間」として祝っています。
ザ よこはまパレード(国際仮装行列)例年5月3日
戦後まもない1953年、横浜港の再生と、国際都市としての復興を伝えるために始まった「国際仮装行列」が、その始まりです。2002年から「ザ よこはまパレード」となり、毎年30万人を超える人が集まる、初夏の風物詩になっています(『広報よこはま』2026年5月号)。
行列は山下公園の前を出て、赤レンガ倉庫の前を通り、馬車道を抜けて、伊勢佐木町へと進みます。
開港記念日と横浜開港祭6月2日/開港祭は例年6月2日まで
開港記念日を祝う市民の祭りは、1982年、「開港を祝い、港に感謝しよう」を合言葉に、毎年6月2日に開かれる「横浜どんたく」として始まりました。1995年からは「横浜開港祭」となり、市民の手で続く祭りとして、毎年たくさんの人を迎えています。
みなとみらいの臨港パークを主な会場に、300人を超える市民が声を合わせる大合唱「ドリーム・オブ・ハーモニー」。2026年の最後の夜には、光と音の演出「ビームスペクタクル in ハーバー」が港を彩りました。
6月2日は、開港の記憶を伝える場所の誕生日でもあります。横浜開港資料館は1981年のこの日に、開港の地・象の鼻パークは開港150年の2009年のこの日に、開かれました。
7月・8月 朝の蓮July – August
三溪園 早朝観蓮会例年7月下旬〜8月上旬の土・日曜
泥の中から、清らかな花を咲かせる。原三溪は、そんな蓮を、とりわけ愛しました。蓮の花は朝7時から9時ごろが見ごろで、観蓮会の日は、園が朝7時に開きます。暑さの来る前の、静かな時間です。
横浜中華街の関帝誕例年8月ごろ
関帝廟に祀られる関羽の生誕を祝う、神事と祭典です。中華街の関帝廟は、1862年、関聖帝君の木像を祀った裏通りの小さな祠に始まり、1871年、関東の華僑たちの寄付で、本格的な廟が建てられました(横濱關帝廟)。
9月・10月 月と神輿と、街のジャズSeptember – October
お三の宮の秋祭り例年9月
江戸の吉田新田の西の隅には、山王社がありました。人々が「お三の宮」と呼んできた、日枝神社です。戦争のあと、祭りは1948年に復活し、吉田町からも神輿が出ました(『中区史』)。いまも9月の例祭では、町内の神輿が通りを巡ります。
中秋節と、三溪園の観月会例年9月ごろ(旧暦8月15日のころ)
中秋節は、春節・端午節と並ぶ、中華の三大節句のひとつです。十五夜の満月を愛でながら、秋の実りを祝います(横浜中華街発展会)。中華街の店先には、月餅が並びます。
同じ月を、三溪園では日本の庭から眺めます。観月会の夜は古い建物に光が当てられ、臨春閣を舞台に、琵琶や雅楽などが日替わりで奏でられます。
黄金町バザール2026年は9月10日〜10月12日
2008年に始まった、アートの催しです。日ノ出町駅と黄金町駅のあいだの高架下に並ぶスタジオなどを会場に、「アートとコミュニティの関係」と「アジアとの交流」をテーマにしてきました。街がたどってきた時間とともに、作品に出会う季節です。
横濱ジャズプロムナード例年10月
1925(大正14)年、日本で初めてジャズが演奏された街、横浜。市民と演奏家が一つになり、「街全体をステージに」を合言葉に、1993年に始まりました。ホールやジャズクラブ、街角が、その舞台になります。
野毛には、空襲でレコードを失いながら、戦後に店を開け直したジャズ喫茶がありました。この街のジャズは、そうした場所で、聴き継がれてきました。
馬車道まつり例年10月ごろ
赤レンガの舗道とガス灯の通りで知られる馬車道で、1976年11月に第1回が開かれた祭りです(馬車道商店街)。文明開化のころの雰囲気を、通りで楽しめます。
10月の中華街例年10月
秋の中華街では、獅子舞や龍舞が街を巡ります(横浜市観光情報)。
11月・12月 熊手と、港の汽笛November – December
酉の市毎年11月の酉の日
伊勢佐木町に近い、金刀比羅大鷲神社の例大祭です。「お酉様」として親しまれる大鷲神社の祭りで、もとは武家の祭礼でしたが、商人や花街の人たちのあいだに信仰が広がり、毎年11月の酉の日に開かれるようになりました(横浜市観光情報)。福をかき集めるという縁起物の熊手が、夜まで並びます。
三溪園の紅葉例年11月下旬〜12月上旬
聴秋閣は、1922年に三溪園へ移されたとき、三溪によってこの名に改められ、まわりは秋の紅葉を楽しむ景色に整えられました。秋を「聴く」館です。紅葉のころには、その奥の遊歩道が期間を限って開かれます。
山手西洋館の「世界のクリスマス」例年12月1日〜25日
山手の丘の西洋館が、それぞれテーマの国を決め、その国のクリスマスの飾りと文化を伝えます。かつて外国の人たちが暮らした家で、遠い国の冬の祝い方に出会う、ひと月です。
年越しの汽笛12月31日から1月1日へ
年が明けるとき、横浜港に停泊している船が、0時とともに汽笛を鳴らします(横浜市観光情報)。開港から続いてきた港の、一年の結びの音です。
一年を通してAll Year
帆船日本丸の総帆展帆年に約12回
1930年に生まれ、練習船として54年間、海を走った帆船日本丸。その29枚の帆を、すべて広げる日があります。登録したボランティアのうち、毎回80人ほどが、手作業で帆を張ります。帆を広げるのは午前、たたむのは午後です。
横浜ナイトフラワーズ週末を中心に、一年を通して
新港ふ頭と大さん橋から、週末を中心に、5分ほどの短い花火が上がります。2026年度は、一年でおよそ30日。港の夜に、ふと咲いて、すぐに消える花です。
Our Suggestion
祭りの日は、少し歩いて、一杯で結ぶ。
祭りの会場だけを訪ねて帰るのは、少しもったいない気がします。たとえば4月の野毛大道芸の日。昼に芸を見て、心に残った人に投げ銭を。夕方は大岡川沿いを黄金町のほうへ歩き、葉桜の下を戻ってくる。都橋商店街の灯りが川に映るころ、野毛で一杯。
6月2日なら、象の鼻パークから日本大通りをまっすぐ歩き、開港の日の港を眺めてから、関内の街へ。季節の行事は、街を歩く理由になります。祭りのあとの一杯で、その日の街を思い返してみてください。
※実行委員会からの楽しみ方のご提案です。催しの日時は年ごとに変わります。各公式サイトでお確かめください。
Our Suggestion
祭りは、そこに暮らす人たちのもの。
お三の宮の神輿も、中華街の採青も、酉の市の熊手も、見せるための催しである前に、その町の人たちの祈りです。神輿や獅子の道をふさがない。店先で獅子が舞っているときは、少し離れて見守る。人に向けてカメラを構えるときは、ひと声かける。
人の集まる日には、街の路地の奥にも、ふだんの暮らしがあります。夜は声を落とし、ごみは持ち帰る。そうして毎年、気持ちよく迎えてもらえることが、祭りを続けてきた人たちへの、いちばんの敬意だと思います。
※実行委員会からのお願いです。混み合う日は、公共の交通機関でお出かけください。
撞くPlay
祭りのあとに、キューを握るのもまた一興です。関内・伊勢佐木町に、ビリヤード場が集まっています。関内・伊勢佐木町のページへ →
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出典(確認日:2026年10月5日)
- 横浜市『広報よこはま』2026年5月号「みんなで祝う 横浜開港月間」
- 横浜市観光情報サイト「横浜年間恒例イベント」
- 三溪園「年間イベントスケジュール」、同 記者発表(観梅会・桜ライトアップ・早朝観蓮会・観月会・紅葉の遊歩道開放・お正月)
- 三溪園「鶴翔閣」、「聴秋閣」
- 横浜中華街発展会協同組合「第40回 横濵中華街『2026春節』」
- 横浜中華街発展会協同組合 公式サイト(中秋節)
- 横濱關帝廟「歴史」
- 横浜市中区「大岡川桜の開花情報」(2026年)
- 横浜市記者発表(南区)「第3回みなみ桜まつりを開催します!」(2026年3月12日)
- 横浜市中区『中区史』(1985年)地区編 第四章 関外地区
- 野毛大道芸 公式サイト
- ヨコハマ経済新聞「「闇市」精神がルーツ? 横浜の一大イベント「野毛大道芸」事情」(2004年)
- 横浜市観光情報サイト「ザ よこはまパレード(国際仮装行列)」
- 象の鼻テラス「象の鼻テラスについて」
- 吉田町名店街会「三ノ宮日枝神社例祭・町内神輿巡行のお知らせ」(2022年)
- 黄金町エリアマネジメントセンター「黄金町バザール+上大岡バザール2026」
- 横濱 JAZZ PROMENADE 公式サイト、横浜市観光情報サイト「横濱ジャズプロムナード」
- 横浜市観光情報サイト「金刀比羅大鷲神社 酉の市」
- 神奈川県観光協会「山手西洋館 世界のクリスマス」
- 横浜市観光情報サイト「横浜マリンタワー『カウントダウン特別チケット』販売」
- 帆船日本丸記念財団「総帆展帆」
- 横浜ナイトフラワーズ 公式サイト
ここに書いた時期は、これまでの開催をもとにした目安です。回数・日付は出典の時点のものです。開催の時期・内容・会場は年ごとに変わり、天候などで取りやめになることもあります。お出かけの前に、かならず各公式サイトでお確かめください。
